はじめに:入院する子どもとおもちゃの大切な関係
お子さんの入院が決まったとき、保護者の方々はさまざまな不安を抱えることでしょう。特に幼児から小学校低学年のお子さんにとって、慣れない病院環境は大きなストレスとなります。そんな時、お気に入りのおもちゃは子どもにとって大きな心の支えとなります。
本記事では、お子さんの入院時に役立つおもちゃの選び方から、病院で許可されるおもちゃの種類、年齢別のおすすめ商品まで詳しくご紹介します。この情報が、入院というつらい体験をお子さんにとって少しでも和らげるお手伝いになれば幸いです。
入院時のおもちゃの重要性とその効果

おもちゃがもたらす心理的効果
入院中の子どもにとって、おもちゃは単なる暇つぶしの道具ではありません。心理的な安定や治療へのポジティブな影響など、多くの効果をもたらします。
- 安心感の提供: 慣れ親しんだおもちゃは、見知らぬ環境での安心感につながります。
- ストレス軽減: 遊びを通じて入院によるストレスや不安を発散できます。
- 治療への前向きな姿勢: 楽しい時間があることで、治療にも前向きに取り組めるようになります。
- 自己表現の場: 特に言葉での表現が難しい年齢の子どもにとって、遊びは感情表現の重要な手段です。

息子が点滴を怖がっていたとき、お気に入りのヒーロー人形が「注射に勇気を出して立ち向かう」ごっこ遊びをしたら、実際の処置も少し頑張れるようになったんです。おもちゃを通して不安と向き合えるのは本当にすごいことだと思いました。
医療現場でも認められる「遊びの治療効果」
現代の小児医療では、「プレイセラピー(遊戯療法)」という専門的なアプローチがあります。これは遊びを通じて子どもの心理的ケアを行う手法で、多くの病院で取り入れられています。
日本小児科学会の調査によると、適切な遊び環境が提供された小児病棟では、子どもたちの回復力向上や入院期間の短縮につながるという報告もあります。おもちゃを通じた遊びは、医学的にも治癒を促進する効果が認められているのです。
(参考:日本プレイセラピー協会)
病院に持ち込めるおもちゃの基準と注意点
病院にはさまざまな制約があるため、すべてのおもちゃが持ち込み可能というわけではありません。お子さんが喜ぶものを選びたい気持ちは理解できますが、まずは病院のルールを確認することが大切です。
病院で一般的に許可されるおもちゃ
多くの病院で持ち込みが許可されている一般的なおもちゃをご紹介します:
おもちゃの種類 | 具体例 | 注意点 |
---|---|---|
ぬいぐるみ・人形(小〜中サイズ) | 清潔で洗濯可能なもの | 綿やポリエステル素材のもの |
絵本・塗り絵・クラフト用品 | 音が出ないもの | 小さなパーツが少ないもの |
カード・ボードゲーム(小型) | 静かに遊べるもの | 片付けやすいもの |
小型の電子機器(年齢制限に注意) | ヘッドホン付きの音楽プレーヤー、携帯ゲーム機(要相談) | 年齢に合ったもの、使用時間や音量に配慮 |

「おもちゃは持ってきていいですか?」と聞いたら、病院によってルールが違うことを知りました。事前確認って本当に大事ですね。音の出るおもちゃはNGでしたが、絵本や塗り絵は大歓迎と言われてほっとしました。
持ち込みが制限されることが多いおもちゃ
次のようなおもちゃは、多くの病院で持ち込みが制限されている場合があります:
制限されるおもちゃの種類 | 具体例 | 理由 |
---|---|---|
大きな音の出るおもちゃ | 電子音が鳴るもの、楽器類 | 他の患者さんの迷惑になるため |
小さなパーツが多数あるおもちゃ | 誤飲の危険性があるもの、ブロックなど床に散らばりやすいもの | 誤飲や窒息の危険性、紛失のリスク |
衛生面で問題があるおもちゃ | 洗えないぬいぐるみ、古いおもちゃで清潔さに問題があるもの | 感染症のリスク |
大型のおもちゃ | 持ち運びや収納が難しいもの、病室のスペースを大きく占有するもの | 病室のスペース、他の患者さんへの配慮 |
持ち込み前の衛生管理の重要性
おもちゃを病院に持ち込む前に、必ず洗浄や消毒を行いましょう。特に免疫力が低下している入院中のお子さんにとって、おもちゃの衛生状態は非常に重要です。
- ぬいぐるみ・布製品: 可能であれば洗濯し、完全に乾かす
- プラスチック製品: 中性洗剤で洗浄し、アルコール消毒も検討
- 電子機器: アルコールシートで表面を拭く(メーカーの推奨に従う)
年齢別おすすめおもちゃと選び方のコツ

お子さんの年齢や発達段階、そして入院の状況に合わせたおもちゃ選びが大切です。ここでは幼児期から小学校低学年までの年齢別におすすめのおもちゃをご紹介します。
2〜3歳児向けおすすめおもちゃ
この年齢の子どもは、感覚的な遊びと単純な仕組みのおもちゃを好みます。また、安全性への配慮が特に重要です。
おもちゃの種類 | 具体例 | 選び方のコツ |
---|---|---|
布製絵本・しかけ絵本 | 触って楽しめる素材のもの、簡単なストーリーのもの | 洗濯や消毒可能で清潔に保てるもの |
ぬいぐるみ・抱き人形 | 洗濯可能なもの、縫い目がしっかりしているもの | 肌触りが良く、安心感を与えるもの |
シンプルなパズル(大きめピース) | 4〜6ピース程度のもの、好きなキャラクターや動物のもの | 誤飲の心配がない大きめのピースのもの |
クレヨンと塗り絵 | 非毒性の太いクレヨン、シンプルな絵柄の塗り絵 | 握りやすく、折れにくいクレヨン。大きな絵柄で塗りやすい塗り絵を選ぶ |


4〜5歳児向けおすすめおもちゃ
想像力が発達し、より複雑な遊びを楽しめるようになる年齢です。入院中の制約の中でも創造性を発揮できるおもちゃが適しています。
おもちゃの種類 | 具体例 | 選び方のコツ |
---|---|---|
スティッカーブック・シール遊び | 繰り返し使えるタイプ、テーマ性のあるもの | 剥がしやすく、何度も使えるもの。物語性のあるものがおすすめ |
フィンガーパペット・手袋人形 | 物語を作って遊べるもの、衛生的に保てるもの | 洗濯できる素材のもの。親子でコミュニケーションを取りながら遊べる |
マグネット式おもちゃ | 落としても散らばりにくいもの、ベッド上で遊びやすいもの | パーツが大きめで紛失しにくいもの。ベッドの柵などにもくっつくものが便利 |
簡単なカードゲーム | 神経衰弱など簡単なルールのもの、防水加工されたもの | ルールがシンプルで理解しやすいもの。水に濡れても大丈夫な素材だと安心 |


小学校低学年(6〜9歳)向けおすすめおもちゃ
論理的思考や社会性が発達するこの時期は、じっくり取り組めるおもちゃや、友達や家族と一緒に楽しめるものが適しています。
おもちゃの種類 | 具体例 | 選び方のコツ |
---|---|---|
パズルブック・迷路本 | 難易度の異なるパズルが複数入ったもの、長く楽しめるもの | 飽きずに続けられるよう、様々な種類のパズルが入っているものがおすすめ |
カードゲーム・簡単なボードゲーム | UNOなどの定番ゲーム、家族で遊べるもの | ルールが簡単で、短時間で終わるものが良い |
工作キット(病院と相談) | 糊や針を使わないタイプ、完成後も楽しめるもの | 安全に配慮し、病院の許可を得てから持ち込む |
電子機器(年齢制限に注意) | 教育用アプリが入ったタブレット、音量調節可能なもの | 使用時間やコンテンツに注意し、周りの迷惑にならないよう配慮する |


おもちゃ選びの基本的なポイント
年齢を問わず、入院時のおもちゃ選びで共通して考慮すべきポイントをまとめました:
- お子さんの好み・興味を第一に考える
- 病状や治療内容に合わせる(点滴中でも遊べるかなど)
- 病院の規則に適合しているか確認する
- 衛生管理のしやすさを重視する
- 長く遊べる多様性のあるものを選ぶ
- 静かに遊べるものを基本とする
- 持ち運びやすさも考慮する
入院タイプ別おすすめおもちゃと過ごし方
入院の形態や期間によって、適したおもちゃや過ごし方も変わってきます。ここでは短期入院と長期入院それぞれの場合におすすめの過ごし方をご紹介します。
短期入院(1週間以内)の場合
短期入院では、お子さんの不安を和らげ、入院生活をスムーズに過ごすことを重視しましょう。
- なじみのあるおもちゃを中心に持っていく
- いつも寝るときに使っているぬいぐるみ
- お気に入りの絵本
- 持ち込むおもちゃは少数に絞る
- 管理が簡単な2〜3点程度
- 飽きにくいバリエーションのあるもの
- 簡単な時間つぶしグッズを用意する
- 塗り絵とクレヨン
- シールブック

3日間の短い入院だったので、お気に入りぬいぐるみと絵本2冊、それにシールブック1冊だけ持っていきました。荷物を最小限にしたかったのですが、これで十分だったみたいです。短期間なら「いつもの」ものがあるだけで安心できるんですよね。
長期入院(1週間以上)の場合
長期入院では、日々の入院生活に変化をつけ、お子さんのモチベーションを維持することが重要になります。
- ローテーションできるおもちゃの準備
- 週ごとに入れ替えられるよう複数用意
- 飽きたら家族が持ち帰り、新しいものと交換
- 成長や治療の進行を実感できるおもちゃ
- 徐々に完成していく工作キット
- 進度記録ができる塗り絵や日記帳
- 計画的な遊びの時間割を作る
- 治療スケジュールに合わせた遊びの時間
- メリハリのある一日の過ごし方
運動制限がある場合のおすすめ
ベッド上での安静が必要な場合など、体を動かせない状況でも楽しめるおもちゃを選ぶことが大切です。
おもちゃの種類 | 具体例 |
---|---|
手先だけで楽しめるおもちゃ | 指人形、折り紙(年齢に応じて)、小型のぬいぐるみ |
知育要素のあるもの | カードゲーム、簡単なパズル、点つなぎ |
創造性を刺激するもの | お絵かきセット、想像力を使う絵本、シール遊び |
病院でのおもちゃの管理と衛生対策

入院中のおもちゃの管理は、お子さんの健康を守るために非常に重要です。適切な衛生管理を行い、清潔な状態を保ちましょう。
日々のお手入れ方法
- 定期的な消毒
- アルコールシートでの拭き取り(素材に適した方法で)
- 布製品は可能であれば定期的に持ち帰って洗濯
- おもちゃの使い分け
- 食事中に使わないおもちゃの区別
- 床に落ちたものはすぐに消毒
- 収納場所の清潔さ
- 専用のクリアケースなどに保管
- 埃がたまりにくい環境づくり
感染予防のためのおもちゃ選びのポイント
- 洗えるおもちゃを優先
- 水洗いができるプラスチック製
- 洗濯可能な布製品
- 素材に注目
- 消毒液に強い素材
- 劣化しにくい質の良いもの
- シンプルな形状のもの
- 細かい溝や隙間のないもの
- 拭き取りやすい形状

入院中は普段以上に衛生面に気を使いました。特に免疫力が下がっている時期だったので、毎日アルコール消毒できるおもちゃを中心に選びました。小さな工夫ですが、おもちゃ専用の収納ボックスを用意したのも良かったですね。床や色々な場所に置きっぱなしにならないので。
プロが教える!入院中の子どもを支えるおもちゃの活用術

小児病棟の医療スタッフや遊びの専門家(チャイルド・ライフ・スペシャリスト)が実践している、おもちゃを通じた子どものサポート方法をご紹介します。
おもちゃを通じた医療処置への準備
- 医療ごっこで不安軽減
- お医者さんセットで処置の予行演習
- 人形を患者に見立てた遊び
- 絵本を活用した説明
- 医療や入院をテーマにした絵本の読み聞かせ
- 絵を描きながら処置の説明
入院生活のリズムづくりとおもちゃ
- 朝の遊びルーティンを作る
- 朝日を見ながらの読み聞かせ
- 一日の始まりを告げる特別なおもちゃ
- 治療後のご褒美タイム
- 頑張った後に楽しめる特別なおもちゃ
- 達成感を味わえる遊び

「注射が終わったら、この折り紙セットで遊ぼうね」という小さな目標が、頑張る力になっていたみたいです。おもちゃが「報酬」になるって素晴らしいですね。
入院中の子どもをサポートする病院の設備とサービス
多くの小児病棟では、入院中の子どもたちのために様々な遊びの環境を整えています。これらの設備やサービスを積極的に活用しましょう。
プレイルームの活用法
- 利用可能時間と対象年齢を確認
- 多くの病院では9:00〜17:00頃が一般的
- 感染症の有無による利用制限も要確認
- プレイルームのおもちゃとの使い分け
- 大型おもちゃはプレイルームで
- 個人持ち込みは病室での静かな遊びに
病院内の子ども向けイベント情報
- 定期的なイベントをチェック
- シーズンごとの工作教室
- 読み聞かせ会
- セラピードッグ訪問日
- 参加条件を事前に確認
- 体調による参加制限
- 年齢制限
おもちゃを通じた親子のコミュニケーション
入院中は、親子のコミュニケーションがより一層重要になります。おもちゃを介して質の高い時間を過ごしましょう。
面会時間を充実させるおもちゃの活用法
- 一緒に楽しめるゲーム
- 短時間でも満足感のあるカードゲーム
- 協力して作るおもちゃ
- 会話のきっかけになるおもちゃ
- 「このキャラクター、どんな性格だと思う?」など会話を広げられるもの
- 想像力を刺激する絵本や人形

親が不在時も安心して過ごせるおもちゃ選び
- 自分で完結できる遊び
- 一人でも楽しめるパズルや図鑑
- 年齢に合った一人遊びグッズ
- 寂しさを紛らわせるアイテム
- 録音機能付きぬいぐるみ
- 家族の写真アルバム(防水加工)

仕事で長時間一緒にいられない日は、本当に心配でした。そんな時、録音機能付きのぬいぐるみに「ママはいつも応援してるよ」と声を入れておいたら、看護師さんから「寂しい時にいつも聞いていますよ」と聞いて涙が出ました。親の存在を感じられるものがあると、子どもも安心できるんですね。

まとめ:子どもの笑顔を守るおもちゃ選びのポイント
お子さんの入院は、ご家族にとっても子ども自身にとっても大きな不安とストレスを伴います。しかし、適切なおもちゃの選択と活用によって、その不安を軽減し、前向きな入院生活を送ることが可能です。
もう一度おさらい!おもちゃ選びの5か条
- 病院のルールを必ず確認する
- 事前に持ち込み可能なおもちゃの種類・大きさを確認
- 各病棟によって異なることも
- 子どもの年齢と好みに合わせる
- 発達段階に適したものを
- お気に入りのキャラクターやテーマがあれば優先
- 衛生管理のしやすさを重視する
- 消毒可能な素材
- シンプルな形状のもの
- 入院期間と状態に合わせて選ぶ
- 短期・長期で必要なものは異なる
- 動かせる範囲に制限がある場合は特に配慮
- 心の安定をサポートするものを
- 安心感を与えるなじみのあるもの
- コミュニケーションを促進するもの

入院は確かに大変な経験ですが、それを乗り越えるお子さんの力は本当にすごいものです。適切なおもちゃと親御さんのサポートがあれば、入院生活も成長の機会になります。どんな状況でも子どもらしく過ごせる環境づくりを一緒に考えていきましょうね。
お子さんの入院という不安な状況の中で、この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。何より大切なのは、お子さんが安心して治療に専念できる環境づくり。その中でおもちゃは大きな役割を果たします。お子さんの笑顔のために、ぜひ参考にしていただければと思います。
入院は確かに大変な経験ですが、適切なサポートがあれば乗り越えられるもの。そしてその経験が、お子さんの成長の糧となることを願っています。


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