
「育児がしんどい」「完璧な親でいられない」って感じる瞬間、ありますよね。それ、あなたの弱さじゃないとアメリカ政府が公式に言ってくれました。
3歳の息子がいる、いろママです。栄養士・臨床検査技師として国内外の医療・育児情報を追い続けている私が、久しぶりに「これは日本の親にも絶対届けたい」と感じたニュースがありました。
2024年8月、アメリカの公衆衛生のトップ機関が「親のストレスは緊急の公衆衛生上の問題だ」と公式に宣言しました。「そんなの当たり前じゃないの?」と思ったあなた、少し待ってください。
アメリカは日本以上に「自己責任」の文化が根強い国です。そのアメリカが「親のストレスは個人の問題ではなく、社会全体で対応すべき国家課題だ」 と公式に認めた——この重みを、一緒に考えてみたいと思います。
参考元:- 出典記事:The National Desk「’Parents Under Pressure:’ New advisory calls parental stress urgent public health issue」 (2024年8月29日) / PBS News Hour「Surgeon General on mental health struggles facing parents」(2024年)
- 米国保健福祉省(HHS)公式プレスリリース (2024年8月28日)

「米国公衆衛生総監」って何者?なぜこの宣言が重要なのか
まず、この宣言を出した「米国公衆衛生総監 (Surgeon General) 」という役職について知っておくと、この宣言の重みがよく分かります。
米国公衆衛生総監は、アメリカ国民の健康に関する最高責任者です。
過去には喫煙の健康被害を初めて公式に警告したり、HIV/AIDSへの対応を主導したりと、その勧告は 「社会の認識を変える」 ほどの影響力を持ちます。
この役職の発表する「アドバイザリー (勧告) 」は、法的拘束力こそありませんが、社会全体に 「これは見過ごせない問題だ」 というシグナルを送る強力なメッセージです。近年では孤独・SNSが若者に与える悪影響・銃規制などに関しても勧告を出しており、今回の「親のストレス」はその最新版にあたります。

日本で言えば、厚労省の大臣が記者会見で「育児ストレスは国家問題です」って宣言するようなイメージかな。

そう。それが2024年のアメリカで実際に起きたということよね。
勧告「Parents Under Pressure」の中身
勧告のタイトルは 「Parents Under Pressure(プレッシャーの下にある親たち)」 。主要なポイントを整理します。
① 現状認識:親のストレスは「個人の問題」ではない
勧告では、現代の親が仕事・家族・個人の生活というさまざまな責任のバランスを取ろうとする中で、深刻なプレッシャーを受けていると指摘しています。
特に注目したいのが、 「親のストレスは子どもに直接的・間接的に悪影響を及ぼしている」 という部分です。勧告では、感情的に追い詰められた親が自己嫌悪に陥るケースも報告されています。
ニュージャージー州に住む母親のキビル・スタシックさんはこう語りました。「家族のこと、仕事のこと、個人的な責任、自分の時間……そのすべてのバランスを取ろうとしている。毎日が綱渡りよ」と。
そして「子どもに感情をコントロールするよう言いながら、自分が感情を失ってしまった瞬間に、自分は親として失格だと感じた」とも話しています。

この言葉、胸に刺さりました。私も息子に「落ち着いて」と言いながら、自分がカーッとなってしまう瞬間があって…。あの罪悪感は、世界中の親が感じているものなんだと知って、少し楽になりました。
② 「大丈夫じゃなくても大丈夫」というメッセージ
公認カウンセラーのリー・リチャードソン博士は、勧告を支持しながらこう言っています。
「ストレスについて話すことが、子どもに『大丈夫じゃなくても大丈夫』 だというメッセージを送ることになる」と。
これは日本の「強い親」「完璧な親」を求める文化へのアンチテーゼとも重なります。親が自分の弱さを認め、声に出すこと自体が、子どもへの最高の教育になるという考え方 です。
③ 具体的な政策提言:社会の仕組みで支える
今回の勧告が単なる「頑張れ」メッセージと違う点は、 具体的な政策改革を国に求めている ことです。
全国的な有給家族・医療休暇制度の導入 、 子育て支援税制の拡充(childcare tax credits) 、 貧困対策プログラムの強化 ——これらを国家として整備することで、構造的に親の負担を軽減しようという提言です。
日本の子育て環境と何が違う?日本の現状と比較してみる

アメリカのニュースだと「自分には関係ない」と思う方もいるかもしれないけれど、日本と比べてみると、見えてくるものがあるわ。
育児休業:制度はあるが「取れる空気」があるか
日本の育児休業制度は、 制度設計の上ではむしろ世界トップクラス に充実しています。
日本では育児休業の対象者のうち、女性の約84%が取得している一方で、 男性の取得率は長年低水準 に留まってきました。
2023年には男性の育休取得率が大幅に上昇し約30%に達しましたが、それでも母親への集中は依然として解消されていません。
家事・育児の分担:世界で最も偏った国のひとつ
研究データが示す数字は厳しいものです。
日本の男性が家事・育児などの無償労働に費やす時間は 1日平均約41分 で、OECD平均の137分を大幅に下回っています。
一方、日本の女性は1日平均約224分 を家事・育児に費やしており、この非対称性が母親への過度な負担につながっています。
「ワンオペ育児」という日本独自の言葉が生まれた背景
「ワンオペ育児」 という言葉が日本で生まれ広まったこと自体、この問題の深刻さを物語っています。
パートナーが長時間労働で不在、近くに頼れる祖父母もいない、保育所は待機児童問題……日本の親、特に母親は「一人で全部やる」ことを事実上強いられてきました。
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このニュースが日本の親に伝えること

アメリカが「親のストレスは社会問題だ」と認めたことで、私が一番伝えたいのは 「あなたが弱いから辛いんじゃない」 ということ。
「完璧な親」を求めるのをやめる許可
日本の育児文化には「子どものためなら何でも犠牲にする」「親が辛そうにしてはいけない」という暗黙のプレッシャーがあります。
でも、世界最高水準の医療・公衆衛生の専門家集団が「それは無理だし、無理をさせる社会の方がおかしい」と言っているのです。
「助けを求める」ことは正しい行動
リチャードソン博士が言うように、自分が「大丈夫じゃない」と声に出すことは、子どもへの大切なメッセージになります。
完璧を演じることより、「ママも疲れることがある」と正直に伝える方が、子どもの情緒発達にとって有益だという視点は、日本の子育て文化にこそ必要かもしれません。
社会に変化を求める声を上げる
今回の勧告が最も重要なのは、「個人の努力だけでは解決できない問題がある」 と政府・社会・企業に変化を求めている点です。
育児支援制度、保育の充実、男性の育休取得、長時間労働の是正——これらは個人の問題ではなく、社会全体で取り組むべき課題です。
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まとめ:「親のストレスは社会問題」という視点を持つ

このニュースを知ってから、「育児が辛い」と感じる自分を責める気持ちが少し減りました。辛いのは当然で、それを支える仕組みが不十分なだけ。そう思えると、少し楽になれる気がします。
アメリカ公衆衛生総監の勧告「Parents Under Pressure」が伝えるメッセージを、最後にまとめます。
親のストレスは 個人の弱さではなく、社会構造の問題 です。
解決のためには個人の努力だけでなく、 国・企業・コミュニティが仕組みとして支える 必要があります。
そして今すぐできることとして、「大丈夫じゃない」と声に出す勇気を持つ ことが、実は子どもへの最も誠実なメッセージになる——そういう時代になっています。
日本の育児文化が少しずつでも変わっていくために、このニュースが一つのきっかけになれば嬉しいです。
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